子どもを抱っこひもで抱っこしたまま、曲に合わせてステップを踏む「ベビーダンス」。お母さんは体を動かすことでストレス発散に、子どもはお母さんに抱っこされると気持ちいい――。親子にそんな効果のあるベビーダンスが、全国のお母さんたちに広まっています。

「産後エクササイズにもなり、親子の、さらには家族の絆づくりにもつながります」と話すのは、ベビーダンス考案者の田中由美子さん。日本ベビーダンス協会・会長兼代表理事であり、社交ダンスのプロダンサーでもある田中さんにお話を伺いました。

―子どもができるまで、プロのダンサーとして踊っていらしたんですか。

毎日踊っていました。国内外の競技会などにも出場していましたし。でも、30歳のころに自分の目標をひととおり達成することができたなぁと思って、つぎは子どもを産んで子育てをがんばろう! と考えたんです。そうしたら、願い叶って子どもを授かり、子育てをはじめました。それまで毎日踊る生活をしていたものですから、子どもを抱っこしてると自然に体が動いて、気づけば踊っていました(笑)。そうやって踊っていると、ぐずらなくなったり、気持ちよさそうに寝ることが多かったんですよね。

―それがベビーダンス考案のきっかけに?

違うんです。私にとって、抱っこしながら踊るのは当たり前すぎて…。あるとき、社交ダンス初心者の主人が子どもを抱っこしながらステップしているのを見ていたら、子どもがいつの間にか気持ちよさそうに眠っていました。簡単なステップで揺られているだけで子どもは気持ちいいんだ、と気がついたんです。それがベビーダンス考案のきっかけでした。

そんなことがあったことと、出産した病院で出会ったお母さんたちとサークルをつくって週1回集まっていたのですが、ただおしゃべりだけじゃなくて、それぞれの得技を持ち寄ってなんかやってみようっていうことになり、抱っこしながらでも踊れる動きなら、ダンス未経験のお母さんたちもできるかも! と思って、みんなができそうなプログラムを考えたんですね。そうしたら、「楽しい!」って好評だった。

その後、小児科の先生と相談しながら社交ダンスのステップをもとに、テンポをゆっくりにしたり、ステップを変えたり、産後のお母さんに負担のない安全な動きにプログラムを改良しました。そうやって活動をつづけていたらいろいろなメディアに取材してもらったり、地方の人から出張レッスンの依頼が来たりするようになって、私ひとりでは回りきれなくなってしまいました。

―2009年に日本ベビーダンス協会を設立し、インストラクター養成講座もつくられましたね。

協会をつくった理由はいろいろですが、ダンスを通してみんなに幸せになってほしいと思ったことが大きいです。もともと福祉に関心があったので、ベビーダンスと併行して高齢者施設に行ってダンスを披露したり、おじいちゃんやおばあちゃんと一緒に踊ったりする活動もしています。おじいちゃんもおばあちゃんもダンスをすると、ベビーダンスをやっているお母さんたちと同じように笑顔になるんですよ。ダンスを通して人が笑って幸せになる、社会貢献できているって実感しました。社会貢献ができるような協会をつくりたかった、それが一番ですね。だから、日本ベビーダンス協会では、ベビーダンスや高齢者とのダンスなど、ダンスを通した社会貢献活動を積極的に行っています。

そしてもうひとつ、ダンスに恩返しをしたいという思いもありました。小学校のころに両親が離婚し、母と姉と私の生活がはじまったのですが、その母も私が中学生のときに亡くなりました。精神的に不安定になりそうなときに支えてくれたのがダンスなんです。ダンスがあったから道を踏み外すことなく私はここまでこられた。だから、自分を育ててくれたダンスに恩返しがしたい。ベビーダンスを広げて、ダンスを愛してくれる人たちを少しでも増やしていくことが、ダンスへの恩返しになるのではないかと思っています。

―今日、参加されていたお母さんたちもとても楽しそうに見えました。

母子ともに堂々と自分らしく過ごせる場所ってなかなかないと思うんです。子育てってあたりまえのことなのに、外に出てみると肩身の狭い思いをすることが多い。家にいるだけでは閉塞感で悶々としてしまう。そんなお母さんの気持ちにベビーダンスはピタッとはまったんだと思います。親子が一緒に楽しい時間を過ごせて、体を動かすからお母さんも子どもも気持ちがいい、そんな環境とか経験はあまりないですから。

夫婦の不和って、子育て中にはじまることが多いらしいんです。お母さんが楽しくないと子どもの発達にも影響するって、あるお医者さんが言っていました。お母さんが笑っていたら子どもも幸せで、お父さんも自然と笑っていられるんじゃないかと思います。お母さんが笑顔でいる手助けにベビーダンスがなればいいですね。

―ベビーダンスは、家族円満の方法とも言えますね。

最近では、お父さんの受講者も増えているんですよ。寝かしつけは難しいけれど、ベビーダンスではじめて子どもが寝てくれた、というのがお父さんの自信につながるみたいです。ベビーダンスでお母さんお父さんを応援することが家族の幸せに、ちょっと大袈裟ですけど、ひいては世の中の平和につながると信じて活動をつづけています。

田中由美子(たなか・ゆみこ)さん

田中由美子(たなか・ゆみこ)さん

1975年生まれ、大阪府出身。舞踊家、振付家、子育て支援者。ダンスを習っていた6歳上の姉に影響され、中学生のころから社交ダンスを始めのめりこみ、その後プロダンサーに。2000年、大阪から上京。06年に長女を出産。07年ベビーダンスを考案・開講。09年一般社団法人「日本ベビーダンス協会」を設立、代表理事に。


ベビーダンス教室におじゃましました。
(開催場所:神奈川県厚木市・塩塚クリニック)

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まずはなごやかな雰囲気づくり。みんなで輪になり、歌や手遊びでリラックスします。

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しっかりとストレッチ。子どもたちは楽しそうに遊び回っています。

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抱っこひもで赤ちゃんを抱っこしてレッスン開始!

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まずはベビーダンスの基本から。

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サンバのリズムに合わせてウォーキング。気持ちよさそうな顔をしはじめた子もいました。

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